忙しい毎日の中で、なんとなく頭が働かない。
集中力が続かず、物の名前や人の顔がすぐに出てこない。
そんな、ちょっとした脳の衰えを感じること、ありませんか?
前回の記事では、なぜ睡眠が必要なのかを、7つの理由からお話しました。
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知っておきたい!睡眠が必要な7つの理由
「やることがたくさんあって、寝ている時間が、もったいない。」 そんなふうに感じたことはありませんか? 日々の仕事、家事、家族との時間、自分の夢。 どれも大切で、削れるものはひとつもない。 だから「睡眠 ...
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今回はその中から脳に関わるテーマとして、1つめの理由「脳の回復と記憶の定着」について、お話していきます。
ななみ先生、どうしたら脳はしっかり働くるん?


ねるるん、毎日ぐっすり眠って、脳を回復させることが重要です。
脳の疲れと老廃物
私たちの脳は、目が覚めているあいだ、ほとんど休むことなく働き続けています。
朝から晩まで、予定を確認し、人の話を聞き、考えをまとめ、判断を繰り返しています。
膨大な情報処理と意思決定を、こなしているのです。
その状態は、たとえるなら何十ものアプリを同時に開いたまま使っているスマートフォンのようです。
知らないうちに動作が重くなり、バッテリーも、どんどん減っていきます。
脳がフル稼働すればするほど、内部には老廃物も溜まっていきます。
これは、思考や情報処理をする過程で自然と生まれるもので、放っておくと脳の働きを鈍らせてしまう原因にもなります。

体の疲れは「だるい」「重い」などの感覚で気づきやすいですが、脳の疲れは気づきにくいものです。
- 集中力が続かない。
- 判断に時間がかかる。
- 伝えたい言葉が出てこない。
- 覚えたはずのことが、思い出せない。
- 買い物に行ったが、何を買うのか忘れた。
- 人の話が頭に入っていかない。
このような形で、じわじわと現れてきます。
脳が回復するためにしている4つのこと
仕事や家事が忙しくて、睡眠時間を削る方も多いかもしれません。
でも、寝ないで頑張ったけれど、効率が悪かったり、ミスが増えたりして「思ったより進まなかった」という経験をされたこともあるでしょう。
これは脳が回復できていないために、処理能力そのものが落ちているからなのです。
気合や根性で頑張っても、土台である脳のコンディションが整っていなければ、力を出しきれません。
それは、トップアスリートが高いパフォーマンスを発揮するために、練習と同じくらい、休養を重視するのと同じ理屈です。
睡眠を削れば削るほど、脳は回復できず、パフォーマンスは低下していくのです。

睡眠は脳にとって回復の時間ですが、眠っている間、脳は休んでいるのでしょうか。
実は、私たちがぐっすり眠っている間、脳は自分自身を整えるために働いています。
脳が睡眠中に行っている、大切な働きは下記4つです。
- 老廃物の除去
- 神経細胞の修復
- 情報の仕分け
- 記憶の整理と定着
ひとつずつ、みていきましょう。
老廃物の除去
脳は、思考・感情・記憶などの活動を通して、たくさんのエネルギーを消費しています。
そしてその結果として生まれるのが、老廃物です。
特に有名なのが、アミロイドβ(ベータ)という、たんぱく質です。
これは、脳の神経活動によって自然に生まれる“ゴミ”のようなもので、通常は眠っている間に排出される仕組みになっています。
この排出を担うのが、グリンパティックシステム(glymphatic system)と呼ばれる、脳のお掃除機能です。

とくに深いノンレム睡眠の間に活発になり、脳に溜まった老廃物を洗い流して、スッキリとした状態へ戻してくれます。
睡眠時間が足りなかったり、眠りが浅かったりすると、このお掃除がうまくいかず、老廃物が脳に蓄積してしまいます。
その結果、脳の働きが鈍くなるだけでなく、将来的には認知機能の低下にもつながる可能性があるとされています。
神経細胞の修復
脳の神経細胞は、毎日の生活の中で少しずつダメージを受けています。
考える、感情を動かす、判断する。
こうした活動だけでも、脳は大きな負荷を受けているのです。
この負荷をリセットしてくれるのが、睡眠中に行われる神経細胞の修復プロセスです。
とくに、深いノンレム睡眠の時間帯には、成長ホルモンが分泌され、脳の回路や神経細胞の修復・再生が行われます。

これはまるで、壊れかけた配線や断線しかけた回路を、夜のあいだに、こっそり修理しているようなものです。
しっかりと眠ることで、翌朝の冴えた頭を作ってくれているのです。
情報の仕分け
現代の私たちは、1日に数万件もの情報にさらされていると言われています。
SNSの投稿、メール、広告、買い物リスト、人との会話など、そのすべてが、脳には「処理すべきデータ」として入ってきます。
そのままでは脳がパンクしてしまうため、「これは覚えておく」「これは捨ててもいい」という仕分け作業が、睡眠中に行われているのです。

とくに重要なのは、「繰り返し出てくる情報」や「感情を伴った体験」です。
脳はこれらを重要と判断し、残すように働きます。
逆に、印象の薄い情報や、一度しか登場しなかったようなものは、不要として消去されていきます。
こうした仕分け作業によって、脳は限られた容量で、効率よく情報を処理しているのです。
記憶の整理と定着
1日の中で、私たちはたくさんのことを見たり聞いたりして、たくさんの情報を脳に取り込んでいます。
これらの情報は、まず「海馬(かいば)」という場所に短期記憶としてしまわれます。
海馬は、いわばメモ帳のような存在です。
でも、メモ帳に書いたことを、いつまでも残しておくことはできませんよね。
そこで、大事な情報だけを「大脳皮質(だいのうひしつ)」という本棚に移して、長く覚えておく作業が行われます。

これが記憶の定着です。
この作業が行われるのが、眠っているあいだです。
睡眠中には、ノンレム睡眠とレム睡眠という、2つの睡眠サイクルが交互にやってきます。
この2つの時間に、それぞれ違う形で記憶の整理が進みます。
ノンレム睡眠は、海馬(メモ帳)に書いてあった情報を、大脳皮質(本棚)へと移す時間です。
レム睡眠は、移した情報を、ほかの記憶とつなげて意味のあるかたちにまとめる時間です。
こうして、勉強したことや経験したことが脳の中できちんと整理されて、あとから思い出せる、しっかりした記憶として残るのです。
たとえば、今日聞いた新しい言葉が、明日になっても覚えていたり、何日かあとに自然に使えるようになったりするのは、この記憶の整理と定着がうまくいっているからなのです。
まとめ
睡眠中に脳は、溜まった老廃物を洗い流し、ダメージを受けた神経細胞を修復し、情報を仕分けして、大事なことを長く覚えられるように定着しているのが、お分かりいただけたかと思います。
これらはすべて、睡眠中にしか行えないプロセスです。
自分を整えパフォーマンスを上げるためにも、睡眠を大切にしてみてくださいね。
眠ってる間も、たくさん働いているなんて、脳ってすごいるん!


ぐっすり眠ることは脳への、一番のご褒美になりますね。
だけど・・・、ぐっすり眠れなくて困っている。
そんな熟睡できない悩みがあるときは、まずは相談してみませんか?
どんな小さなことでも、お気軽にどうぞ。